採択者の声

ペットトリミングサロン プレモ

犬の気持ちにも寄り添うトリミングサロン Trimming Salon PREMO

  • 狛江市 和泉多摩川商店街振興組合
  • 若手・女性
  • 開業

近くの飲食店と親しくなれば、トリミング待ちの飼い主さまに他店を紹介するときにも安心です。

事業内容をお聞かせください

犬がゆったり過ごせるトリミングサロンを狛江で開業

飼い犬をトリミングサロンに連れて行こうとしたところ、ものすごく抵抗されたことがあります。その時に初めて、お店によって犬の扱い方が大きく違うことに気付きました。そのお店はトリミングする人間側の都合を優先するところで、犬は手荒な扱いを受けるのが嫌で抵抗したのでしょう。そこで私は、犬に嫌な思いをさせるならいっそ自分でトリミングしようと思い、トリミングの専門学校に通い始めました。そして卒業から10年以上、トリミングサロンや動物病院でトリマーとして経験を積みました。

長く働くうちに、トリミング業界の問題点が見えてきました。多くのお店は利益を確保するため、決められた時間内にトリミングを終わらせようとしがちです。するとトリマーはどうしても、犬を乱暴に扱ったり、怒って言うことを聞かせたりしてしまうのです。もっと「ワンちゃんファースト」なお店にできないかと思いましたが、店員という立場でそれを実現するのは難しいことでした。また、トリマーの待遇が悪くて長く働きづらい点も、業界全般の課題でした。これらを解決するには、自分で店を開くしかないと思ったのです。また、周囲の何人かから「あなたは経営者向きだ」と言われたことにも背中を押され、ついに2022年1月、小田急線の和泉多摩川駅から徒歩3分の場所にお店を出すことができました。

店の特徴は、「ワンちゃんがゆったり、楽しく過ごせる店」です。タワー型ケージは設置していないので、トリミング以外の時間は自由に動けます。また、お預かりしてからすぐに施術せず、犬がサロンの雰囲気に慣れてから始めるようにもしています。そうして犬と飼い主に寄り添う取り組みを続けた結果、売り上げは順調に伸びました。今は、数カ月先まで予約が埋まっている状況です。

犬をケージに入れて管理せず、自由でストレスない状態で預かるのが五十嵐さんのポリシー

犬をケージに入れて管理せず、自由でストレスない状態で預かるのが五十嵐さんのポリシー

採択されて良かったことと、助成金の手続きで苦労した点や解決方法があればお聞かせください

経営に関する動画を見るなどして必要な知識を学んだ

サロンの開業には、800万円くらいかかると見込んでいました。一方、自己資金は100万円ほどで、両親から借りたお金を加えても全く足りません。そこで、日本政策金融公庫から開業資金を借りようとしたのですが、書類作りが大変でした。トリミングサロンで店長を務めた経験はありましたが、「経営」については全く未知の分野。私は数字も苦手で、どうやって事業計画書をまとめたらいいのか頭を抱えたのです。そこで頼ったのが、会計の知識があり、いろいろな企業のサポート役をしていた知人です。売り上げ予測から水道光熱費までの費用を自分なりに予測してまとめ、その方からアドバイスをもらって、さらに事業計画を磨き直すことを繰り返しました。また自分でも、YouTubeで経営に関する動画を見たりして、足りない知識を補いました。その結果、公庫の審査は無事通過し、500万円の融資を受けられたのです。

若手・女性リーダー応援プログラム助成事業の存在を知ったきっかけは、公社がインターネットに出していた広告でした。狛江市商工会の創業支援制度が利用できないかと情報を集めていたときに広告が表示され、「これは!」と感じたのです。書類審査と面接審査のどちらも難関でしたが、書類審査は公庫用に作った事業計画をベースにできたので、少しだけ気が楽でした。一方、面接審査の準備に、妹などにプレゼンテーションをリモートで聞いてもらい、アドバイスをもらいました。ただ、自分に対して一番厳しくなれるのは自分自身です。プレゼンを30~40回くらい録画して見返し、自分の思いが少しでも伝わるように台本や話し方を修正しました。

自己資金と公庫から借りた資金だけではギリギリだったので、公社から助成を受けられてとても助かりました。

面接審査対策では、録画映像を振り返って台本を修正したり、話し方や間の取り方を工夫したりした

面接審査対策では、録画映像を振り返って台本を修正したり、
話し方や間の取り方を工夫したりした

開業に向けてどのように準備をしましたか?

顧客の「ペルソナ」を設定し、それに合った店舗作りを進めた

事業計画を作っている時期に、私はお客さまの「ペルソナ」(その商品やサービスを使う典型的なユーザー像のこと)を考えました。それは「30代女性、ワンちゃんをサロンに預けることに不安を感じている、質の良いサービスのためにはお金を惜しまない」といったもの。来店してくれる方の具体的な姿を事前に固めてから、それに合わせて店舗レイアウトや内装などを決めていきました。そうすることで、軸をぶらさずに店作りができたと思います。

料金については、あえて競合より2割くらい高く設定しました。こうすることで、犬に良いサービスを受けさせたいと考える層にターゲットを絞りたかったからです。また、トリマーの待遇改善にも、サービスに見合った料金をいただくことが必要でした。結果的にこの設定でも全く問題はなく、開業半年で事業は軌道に乗りました。その後はお客さまからの反応を見つつ値上げして、現在では競合より4割くらい高い料金設定になっています。

開業前には、助成金を利用してチラシを作成し、近隣に配りました。最も強調したのは、ケージを使わないなどワンちゃんを大事にしている気持ちです。それが伝わったのか、配ってからすぐに15件ほどの予約が入りました。

開業直前に配ったチラシ。写真を多用して分かりやすくし、さらに犬を大切にするポリシーを盛り込んだ

開業直前に配ったチラシ。写真を多用して分かりやすくし、
さらに犬を大切にするポリシーを盛り込んだ

商店街での具体的な活動内容や、商店街活動に参加して得られるメリットをお聞かせください

清掃活動に加わるなどして近隣の店舗と関係を深める

私が属している和泉多摩川商店街振興組合では、月1回、朝9時から清掃活動を行っています。私のところは開店時間が9時半なので、今のところは最初の15~20分だけ参加しています。スタッフを雇って余裕が出たら、ぜひ最後までやりたいですね。

トリミングサロンでは、お客さまをお待たせする時間が発生します。そうしたとき、近くのお店の方々と仲良くしておけば「あの喫茶店は素敵なマスターがいて居心地がいいですよ」「あのレストランはランチがおいしいですよ」などと紹介できていいですよ。

ここで開業して2年経ちましたが、商売をしていると、地域への愛着が芽生えてきます。地域に役立てているという感覚は、仕事をする際の支えになる気がしています。

近隣に競合店が2つあるにもかかわらず、予約スケジュールはぎっしり。遠くから車で来店する顧客も多い

近隣に競合店が2つあるにもかかわらず、
予約スケジュールはぎっしり。
遠くから車で来店する顧客も多い

今後の展開について

飼い主向けの情報発信にも取り組んで犬の環境改善を目指したい

私1人で担当できるのは、月に65件くらいが限界です。今はお客さまが増えてキャパシティをオーバーし、心苦しいですが予約依頼をお断りするケースが少なくありません。そこで少し前から、スタッフを雇って2人体制にしたいと考えていました。ただ、新たに入社した方のスキルが低かったり、「ワンちゃんファースト」が実現できなかったりしたら本末転倒です。

そこで採用の際に心がけたのは、応募してくれた方の人柄を見ることでした。トリマーの中には、犬の見た目を可愛くすればそれでいいという考え方の人もいます。でも私は、可愛いカットをするために犬に無理を強いる人より、犬がストレスなく過ごせるようトリミングできる人を採用したいと考えています。そうした方針に沿って半年以上人を探し、ようやくいい方を見つけて、2024年12月に入社していただきました。予約をお断りする数を減らせそうで、ありがたく感じています。

2店舗目を開くことは、今は考えていません。それより余力ができたら、ブラッシングのやり方や、犬のちょっとした仕草から健康状態を知るコツなど飼い主さんの参考になる情報を、動画サイトやSNSなどで発信したいですね。そうして、犬がもっと過ごしやすくなるような環境作りに貢献できればと考えています。

季節ごとの飾り付けをしたフォトブースを店内に設置し、可愛くなった犬を撮影したいというニーズに応える

季節ごとの飾り付けをしたフォトブースを店内に設置し、
可愛くなった犬を撮影したいというニーズに応える

店舗開業を目指す方へアドバイスをお願いします

助成事業への申請は簡単ではないが自らを成長させられる好機

今の収入は、開業前に比べると倍に増えました。そしてそれ以上に嬉しいのは、お客さまから頼りにされ、ワンちゃんのためにも役立てていると毎日実感できることです。「他のトリミングサロンでは暴れて仕方ないのに、この店に連れてくるときは嬉しそう」「うちの子は、五十嵐さん以外には任せたくない」などとお話いただいた時は、店を開いて本当に良かったと感じます。また、ケージを使わずに犬を迎えるなど、一介のトリマー時代から抱いていた理想が思い通りにかなえられるのも、開業のメリットの1つです。

若手・女性リーダー応援プログラム助成事業で、助成金をいただいたことと同じくらいありがたかったのは、審査の過程で自らを成長させられたことです。書類審査のため事業計画をブラッシュアップするうちに、数字への苦手意識は少しだけ和らぎました。また、面接審査のために事業への思いをまとめたことで、自分がやりたい道が明確になったと思います。決して簡単な挑戦ではありませんが、事業に申請することで、経営者として大きくなれるのは確かです。ぜひ頑張ってください。

助成事業への申請は簡単ではないが自らを成長させられる好機

店舗情報

店舗名 Trimming Salon PREMO
代表者名 五十嵐 可奈
商店街名 和泉多摩川商店街振興組合
開業年月 2022年1月
URL https://trimmingsalon-premo.jp/
SNS
  • Instagram
取材日:2025年1月31日