採択者の声

Spicier(スパイシア)

スパイスで感動を届けるスパイスチャイ&インドカレーパン店 Spicier(スパイシア)

  • 新宿区 神楽坂仲通り商店会
  • 商店街
  • 開業

商店街仲間からの口コミもあり多くのお客さまが来店。
地元のお祭りにも積極的に参加しています。

事業内容をお聞かせください

神楽坂で手作りのスパイスチャイとインドカレーパンを提供

大学時代に留学したスウェーデンで、ボリビアから移住してきたホストファミリーに面倒を見ていただきました。その時、ホストファーザーが作ってくれたスパイスたっぷりの料理を食べ、心から感動したのです。その後も仕事や旅行で頻繁に海外を訪れ、これまでに60カ国ほどを訪れてきましたが、どの国にも個性的なスパイス料理がありました。それらを味わうたび私はワクワクし、日本に戻るとスパイスを買って現地の味を再現していました。

ターニングポイントが訪れたのは2022年です。コロナ禍で海外に行けない中、私はたまたま、日本最大級のインド人コミュニティがある西葛西を訪問。そこでスパイス店やインド料理店を訪れ、昔のワクワクした気持ちがよみがえりました。それまではただスパイスが好きなだけでしたが、スパイスの素晴らしさや、その背後にある価値観を多くの人に広めていけたらと考えるようになったのです。それにはスパイスを手軽に楽しめる食べ物が向くと考え、カレーパンのお店を出そうと決意。私は江戸川区インド人会のチャンドラニ会長を何度も訪れ、協力をお願いしました。思いが伝わったのか、チャンドラニさんはお店の顧問になってくれ、カレーパンに包むインドカレーを監修してくださることになったのです。

当時は企業の海外営業職としてフルタイムで働いていたため、週末だけ学芸大学駅近くのシェアキッチンを借り、仲間とカレーパンを売りました。そして半年間の活動で手応えを感じ、Spicierの開店に踏み切ったのです。メインの商品はカレーパンとチャイで、他にもスパイスをふんだんに使ったおやつやパン、ドリンクを日々開発しています。

人気商品はやはりインドカレーパン。テレビや雑誌で何度も取り上げられ、順調なスタートを切ることに成功

人気商品はやはりインドカレーパン。テレビや雑誌で何度も取り上げられ、順調なスタートを切ることに成功

採択されて良かったことと、助成金の手続きで苦労した点や解決方法があればお聞かせください

熱意を示す「紙芝居」を作り、実演を録画してチェック

採択されて良かった点は、やはり初期コストを大幅に抑えられた点です。店舗ビジネスは、どうしても初期投資が大きくなりがちですし、私もスパイスへのこだわりを表現する為に、立地や内装などにとても気を遣いました。また、飲食店は「オープン景気」などと言われ、開業当初は比較的お客様に来ていただけるものですが、半年ほど経過するとどうしても客足が遠のいてしまいがちです。私たちSpicierも例外ではありませんでした。そうした時に、家賃も部分的に補助していただける今回の助成金は経済的にも精神的にも起業したての私を助けてくれました。本当に心強い存在だったと感じています。

ただ、この助成金はメリットが大きい分、採択されるハードルもそれなりに高いと感じています。そこで面接審査に向け、私は自分の想いや事業計画をまとめた「紙芝居」を準備しました。

実際にプレゼンする様子を友人に見てもらったり、ビデオに撮って自分で見直したりしましたが、そこで気付いたのは、事業への熱意を伝えるのが最も大切だということです。論理的に話すより熱く語る方が面接官の心を動かせるのではないかと思って、自分のスパイスへの想いが分かりやすく伝わるようビジュアルを添えた「紙芝居」形式で本番に挑みました。

開業に向けてどのように準備をしましたか?

カレー学校に通うなどして商品の質を高めた

開業にあたっては、チャンドラニさんからたくさんのアドバイスをいただきました。また、私自身もカレーやスパイス分野の著名人が主催するカレー学校に通い、同級生と試作会などを行うことで商品のクオリティを高めました。一方、前職では店舗でマネジメントをした経験があったので、会計や人材の採用・教育については、ある程度の知識がありました。

出店場所は、様々な立地を検討しましたが、私たちが提供するのは個性的で「とがった」商品ですから、外からたくさんの人が訪れ個性的な店が立ち並ぶエリアが向いていると考えたのです。また、私の昔の勤め先があって親しみがあったこと、チャンドラニさんが来日して最初に住んだ街だったことなどいろいろな条件が重なって、最終的に神楽坂を選びました。

出店場所は、神楽坂の裏通りから少しだけ奥まったところを選びました。もちろん、コストを抑える目的もありましたが、神楽坂という街は“隠れている場所”に価値を見出してくださるお客様が多いとても面白い土地です。そうした理由もあり、神楽坂らしく少し奥まっている場所、知る人ぞ知る、という立地を目指して今の場所に出店を決めました。

神楽坂は家賃の高いエリア。だからこそ、神楽坂の土地柄を逆手に取り、固定ファンをしっかりと掴む戦略をとっている。

神楽坂は家賃の高いエリア。だからこそ、神楽坂の土地柄を
逆手に取り、固定ファンをしっかりと掴む戦略をとっている。

商店街での具体的な活動内容や、商店街活動に参加して得られるメリットをお聞かせください

地元の祭りに出店し、2日で数百人に商品を販売

出店時にはカレーパンを持って、同じ商店会の100店舗くらいにあいさつ回りをしました。周りの皆さまにおいしいと思ってもらえれば、仲良くしてくれるでしょうし、口コミが広がるチャンスも生まれると期待したからです。実際、近隣の飲食店の方がお客さまに「あそこのカレーパンとチャイ、おいしいよ」と紹介してくれ、それで来店していただくケースはとても多いです。

商店会では3カ月に1度くらいのペースで会合が開かれますので、私も出られるときは出席するようにしています。顔ぶれは多彩で、他の経営者との交流もしやすい環境です。困りごとがあったら近くにいる商店会会長さんに相談しますし、周りの皆さまには本当によくしていただいています。

2023年と2024年には、私が属する神楽坂仲通り商店会などが主催する「神楽坂まつり」に出店しました。同じ商店会の仲間がSNSで宣伝してくれたこともあり、1日に数百人ものお客さまにお買い上げいただきました。

神楽坂まつりでは自慢のカレーパンを売り出し、スパイスの素晴らしさを多くの来場客に伝えた

神楽坂まつりでは自慢のカレーパンを売り出し、
スパイスの素晴らしさを多くの来場客に伝えた

店内の棚にはスパイスの容器がずらり。海外から仕入れた珍しいスパイスが、商品の大きな魅力となっている

店内の棚にはスパイスの容器がずらり。海外から仕入れた
珍しいスパイスが、商品の大きな魅力となっている

今後の展開について

新商品の開発・発信をしつつ海外での出店を目指す

売り上げを維持して伸ばすためには、カレーパンやチャイといった定番商品を提供するだけでなく、お客さまの話題に上るような商品の開発が必要です。そのため、新商品を生み出す努力は欠かせませんし、それらをSNSで発信することも常に心がけています。例えば2025年1月には、マダガスカルに行ったときに仕入れた最高級のバニラを使ったおやつやチャイをメニューに加えて好評を得ました。

現時点で目指しているのは海外との連携です。最近はスパイス発掘の為にインドネシアやインドによく足を運んでいるので、現地のスパイス会社やカフェとコラボしたり、現地でポップアップストアを開いたりできないか計画を練っています。また、他にもいろいろな国を訪れて新たなスパイス探しをしている中で、新たなつながりができて面白い取り組みができたらいいなと思います。

季節ごとに新メニューを開発し、SNSで情報発信することで関心度を高めて来店客を増やそうとしている

季節ごとに新メニューを開発し、SNSで情報発信することで関心度を高めて来店客を増やそうとしている

店舗開業を目指す方へアドバイスをお願いします

工夫した結果、顧客から好反応を得られた瞬間にやりがいを感じる

もともと仕事を人任せにするのが苦手で、何でも自分でやってしまう性格でした。でも、開業すると周りの人にお願いしなければならないことが増えますから、頼れる人を増やさなければなりません。そのために心がけているのが「オープンマインド」です。成功も失敗も、困っていることも含めて自分に正直に人と接し、私がやることを全部知っていただくと様々な方面から協力を得やすくなると感じています。

それから商売を続けていくには、やはりお客さまを驚かせ、喜ばせようとする気持ちが必要だと感じます。私はお店に来てくれた皆さまに、スパイスを通じて新たな発見をしてもらいたいと常に考えています。そのために、いろいろな情報を集めたり知恵を絞ったりして商品を生み出すのが、私の役割です。

事業には大変なことも多いですが、楽しさの方が上回ります。中でも最も大きいのは、自分が考えて実行したことに対し、お客さまの反応がダイレクトに返ってくるところです。苦労した末に、「こんなカレーパン、食べたことない!」「Spicierに来てからスパイスが好きになり、私も家でスパイスを使うようになりました」などのお声をいただいた時は、何より嬉しいですね。

店舗情報

店舗名 スパイスチャイとインドカレーパン Spicier
代表者名 代表 菅原 友希
商店街名 神楽坂仲通り商店会
開業年月 2022年12月
URL https://spicier.jp/
SNS
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取材日:2025年1月31日