採択者の声

茶雑菓(Chazakka)

日本茶需要創造ショップ 茶雑菓(Chazakka)

  • 品川区 戸越銀座商店街振興組合
  • 商店街
  • 開業

スタンプラリーなどのイベントに参加すれば集客力がアップ。
小売未経験者にとっては、先輩からの助言も心強かったです。

事業内容をお聞かせください

日本茶ファンを増やす店を戸越銀座商店街でオープン

茶雑菓は戸越銀座商店街にあるショップで、日本茶やお菓子、茶器などの販売と、日本茶を使ったドリンクの提供をしています。他にも、日本茶×お酒、日本茶×英語、日本茶×メンタルヘルスといったキーワードで多彩なイベント・ワークショップも開くなどして、日本茶文化の普及を進めています。

お店の運営会社である(株)吉村は、日本茶をはじめとする食品包装袋・パッケージを中心に手掛けている企業です。コーヒーや紅茶、ペットボトル飲料を好む人が増える中、当社には日本茶をもっと盛り上げたいという思いがありました。また、約20年前の時点で私たちの本社に近い戸越銀座商店街には4軒のお茶屋さんが営業していたのですが、今では1軒もありません。そこで、日本茶を手軽に楽しめる茶器やお茶と一緒に味わうお菓子などと触れ合える場を地元戸越銀座に開き、ひとりでも多くの方に日本茶の良さを伝えたいと思って2022年11月に開業したのが、茶雑菓でした。

現在は、期待を上回る売り上げを得られています。また、お客さまの中には日本茶にあまり親しんでこなかった20~30代の方がたくさんいて、新たな日本茶ファンを増やすという役割も十分に果たしていると感じています。

接客する中村さん。日本茶の良さを伝えるかたわら、来店客の生の声を自然に聞き取ることで、新製品のアイデアにつながるケースも多い

接客する中村さん。日本茶の良さを伝えるかたわら、来店客の生の声を自然に聞き取ることで、新製品のアイデアにつながるケースも多い

お湯を注ぐだけで本格的な日本茶を楽しめる人気商品「Leaf tea cup(リーフティカップ)」を使用し、戸越銀座商店街のマスコットキャラクターである戸越銀次郎のオフィシャルグッズ「とごしぎんざ ぶらり茶」を制作して商店街のお土産に

お湯を注ぐだけで本格的な日本茶を楽しめる人気商品「Leaf tea cup(リーフティカップ)」を使用し、戸越銀座商店街のマスコットキャラクターである戸越銀次郎のオフィシャルグッズ「とごしぎんざ ぶらり茶」を制作して商店街のお土産に

採択されて良かったことと、助成金の手続きで苦労した点や解決方法があればお聞かせください

最大2年分の家賃助成が店舗の安定的運営に寄与

当社の管理部には、助成金に関する情報を集めるチームがあります。彼らが定期的に情報をチェックしている中で見つけたのが、公社の商店街起業・承継支援事業でした。以前から常設の売り場を持ってみたいと模索していた当社は、この助成金の存在に背中を押していただきました。

助成金申請のために事業計画書を作成したのですが、それまでの当社はメーカーで、小売業を営んだ経験が全くありませんでした。そのため、1カ月あたりの来店客数や売上額がどの程度になるのか全く予測できなかったことが、最も苦労した点です。仕方なく、業態が似通ったお店のデータを参考にするなどして、何とか事業計画を立てました。

公社のご担当者に対するプレゼンテーションは、社長である橋本と、商品企画担当と茶雑菓の責任者を兼務している中村が担当しました。プレゼンの前には2人で、タイマー片手にリハーサルをしましたし、プレゼン終了後に聞かれそうな質問に対しどう答えるかも打ち合わせました。このとき心がけたのは、私たちの思いを精一杯伝えることです。台本を一字一句読むのではなく、「日本茶の文化を盛り上げたい!」という気持ちを熱く語ろうと2人で話したのを覚えています。

インテリアの一部には廃材を使い、社員がニスを塗って仕上げるなどして、開店費用をできるだけ抑えようと頑張りました。ただ、お店の目的は日本茶を心地よく楽しんでいただくことですから、やみくもにケチるのは違うと思ったのです。インテリアなどでこだわるべきところはこだわった結果、開店費用は当初予定の金額より高くなったため、助成金には本当に助けられました。また、家賃の最大2年分を助成していただけているのも、開店へのハードルが下がってありがたいですね。

試作を繰り返して開発した、沈殿抽出式ティードリッパー「刻音(ときね)」。製品を魅力的に見せるため、演出にも気を配っている

試作を繰り返して開発した、沈殿抽出式ティードリッパー「刻音(ときね)」。製品を魅力的に見せるため、演出にも気を配っている

開業に向けてどのように準備をしましたか?

小売業経験メンバーが中心となって開店準備を実施

もともとメーカーだった当社には、小売・接客の経験が豊富なメンバーは少数派でした。一方、中村は前職で菓子の小売を経験していましたから、店舗運営の準備については中心メンバーとして動きました。なお、開店に際して新スタッフの採用はせず、商店街の近くにある本社に務めている社員が交代で店に立っています。消費者と社員が直接触れ合う機会を設けることも、お店を開いた目的の1つだったからです。お客さまの何気ないひと言から新製品のアイデアが生まれることもありますし、自分が関わった製品がお客さまに喜ばれるのを見て社員がモチベーションを高めたりするなどの効果も表れています。

戸越銀座商店街は買い物や食べ歩きを楽しむ人が毎日押し寄せる商店街で、テナントも大人気です。私たちが現店舗の物件情報を見つけて不動産業者に連絡したときも、当社を含めて4社が申し込みをしていた状況でした。しかも、この物件は当初、飲食業NG・小売業未経験NGという条件だったのです。それにもかかわらず当社が借り手として選ばれたのは、ひとえに「地元企業の信頼」だったと思います。店を開く上では、長年にわたり地元で商売をしてきた実績がものを言うのだと、このときはじめて知りました。

商店街での具体的な活動内容や、商店街活動に参加して得られるメリットをお聞かせください

商店街マップへの掲載やスタンプラリーへの参加は効果大

オープン前に参加した商店街の理事会で、皆さんがとても歓迎してくれたのが印象的でした。また、「チラシができているなら、オープン前にお店の前で配って宣伝したら?」などアドバイスしてもらったのは、小売の経験がない私たちにとって、非常に心強かったです。なお、2023年の夏休みには「子ども店長の日」と題し、5歳から小学6年生までの子どもたちによる職場体験企画も実施しました。こうしたイベントは地域貢献になりますし、お客さまとの絆を強めることにもつながります。

新たに店を出す人の中には商店街の組合に加入しない人もいるようですが、私たちは参加して良かったと思っています。ネットでも公開されている「戸越銀座商店街マップ」に載せてもらったり、スタンプラリーなどの商店街イベントに参加したりすることで、集客力が高まっているからです。さらに、商店街のメンバーでSNSグループを作っているのですが、場合によっては、そこで商売の相談をすることが可能かもしれません。

商店街起業・承継支援事業の申請には、商店街側による「商店街出店確認書」への署名が必要です。どのみち、商店街にはあいさつをすることになるのですから、あらかじめいい関係を築いておく方がベターなのではないでしょうか。

2023年11~12月に戸越銀座商店街で行われたスタンプラリーのカード。こうした商店街全体の施策に参加することで、より多くの来店客を呼び込むことが可能だ

2023年11~12月に戸越銀座商店街で行われたスタンプラリーのカード。こうした商店街全体の施策に参加することで、より多くの来店客を呼び込むことが可能だ

今後の展開について

他社にノウハウを伝え日本茶を盛り上げる店を全国に広めたい

私たちの店には今、いろいろな地域から視察の方が訪れています。私たちが2店舗目、3店舗目を出すより、他社や行政の方々が当店のやり方を取り入れ、全国で日本茶文化を盛り上げるお店を増やしてくれたら嬉しいですね。私たちが目指しているのは、売り上げや利益を拡大することより、ひとりでも多くの人が日本茶と触れ合う機会を作ることですから。

当店の知名度は、まだまだ高くはありません。お客さまの多くは、商店街で食べ歩きなどをしているうちに当店を見つけ、入っていただいた方々です。そこで、「茶雑菓に来たかったから戸越銀座を訪れた」というお客さまをもっと増やすことが、今の目標です。

手応えはつかんでいます。今は開店からようやく1年を過ぎたところですが、来店客数も伸びていますし、ギフトの販売も増えています。今後は魅力的なイベント・ワークショップの提供、SNSでの発信などにより、さらにアピールを強化していこうと模索しているところです。

日本茶文化を多くの人に広めることが茶雑菓の大きな目的だったため、戸越銀座商店街の路面店という人通りの多い立地にこだわった

日本茶文化を多くの人に広めることが茶雑菓の大きな目的だったため、戸越銀座商店街の路面店という人通りの多い立地にこだわった

店舗開業を目指す方へアドバイスをお願いします

前向きな経営者には、自然と「いい話」が舞い込む

開業したての時期は慣れない仕事が続きますし、予想外のできごともたくさん起きます。時には落ち込むことだってありますが、そういう時に大切なのが、自分で自分の心をリセットすることです。「疲れた~」などの弱音を吐かず、「がんばった~」と自分をほめてあげる。あるいは、「なんでこうなったのだろう」というマイナス思考を、「こうすればうまくいくだろうか?」などのプラス思考に切り替えれば、未来は変わっていくと思います。

前向きに考えられる人の周りには同じような人が集まりますし、いい話も自然と舞い込んでくるのです。商店街で元気に生き残っているお店の経営者を見ていると、つくづく、そう感じます。

それから、開業に際して大きなハードルになるのは、やっぱりお金です。その点、助成事業の後押しを受ければ、いっそう夢に近づくことができます。ぜひ上手に利用してほしいです。

店舗情報

店舗名 茶雑菓(Chazakka)
代表者名 株式会社吉村 代表取締役社長 橋本 久美子
商店街名 戸越銀座商店街振興組合
開業年月 2022年11月
URL hhttps://www.yoshimura-pack.co.jp/
SNS
  • Instagram
取材日:2023年12月4日