「黒いフランス菓子」製造販売 Patisserie QuroNoir パティスリークロノアール
- 葛飾区 みのり商店会
- 若手・女性
- 開業
事業内容をお聞かせください
当店は、新小岩駅から徒歩10分の場所にある日本で唯一の“黒いフランス菓子”専門店です。
フランスでの修行、大手製菓メーカーでの企業パティシエを含む20年のキャリアを経て辿り着いた「美味しい+α」の価値とは、お菓子を全て黒くすることで五感の情報を制限し、食べる瞬間まで解けない『謎』を提案することでした。
そんな世にも奇妙なお菓子を生まれ育った地元の方々にお届けしようと、この場所に開店することを決めました。
一番人気の商品は、黒い皮と胡麻の食感が特長のシュークリームで、1日100個、累計販売数5万個を達成しました。その他、低温でじっくりと蒸し上げる真っ黒なチョコレートプリンをはじめ、常時30種類以上の黒いお菓子を取り揃え、お出かけの際の手土産としてご好評いただいています。
1号店から徒歩1分の場所に、カフェスペースを併設した2号店を今年(2022年)9月にオープンしました。
また、全国配送可能なネットショップ、足立区・江戸川区にあるアクセサリー店・生花店内での委託販売も行っています。
1番人気の黒いシュークリーム
採択されて良かったことと、助成金の手続きで苦労した点や解決方法があればお聞かせください
独立する際、障壁に感じていた資金面については、東京都中小企業振興公社さんの助成金を活用してクリアになりました。また、助成金の採択後はその実績の影響だと思うのですが、金融機関の融資がスムーズに受けられるようになり、助成金の申請ができて本当によかったと感じています。
助成金を申請する際、期間内に不備なく資料を揃えることに苦労しました。
事業計画書の作成は順調に進められたのですが、テナントが決定するのが申請の締切間際までかかってしまい、物件の白図が入手できてから2日間という短期間で大半の資料を揃えねばならない状況になりました。
通常、工事図面の作成、見積額の算出など、数か月以上かかることもあるのですが、業者さんに協力いただいたおかげで無事、期日までに間に合わすことができました。
乗り越えられた要因としては、テナントが決定する前から、綿密なイメージの共有を行い、協力いただく業者さんとの信頼関係を構築していたことが大きかったと思います。短い設計期間でしたが、顧客導線や感染防止対策にもこだわった店舗を無事完成することができました。
カフェスペースを併設した2号店
経営者として意識していることはありますか?
おいしいお菓子作りに専念しつつ、家族との時間も大切にしながら、長く働き続けられる環境を作ることです。
パティスリーの仕事には手を止められない作業が多くあり、家族との時間が作れないなど悩ましいことも多くありますが、知恵を絞り負担削減できるよう常に意識しています。
また、パティシエは勤務時間の長さから離職後の復帰が難しい職業でもあります。当店では、出産等で職場を離れた女性が子育てをしながら週1、2回でも勤務できる環境を整えているところです。
女性が働きやすい職場を作ることは、夫(パートナー)を支えることにもつながるはずです。
今後さらに雇用を増やせるように事業規模を拡大しながら、人とのつながりを広げていき、地元・葛飾に還元できる事業に育てていけたらと考えています。
若手リーダーとして、商店街での活動に意欲的に取り組まれていると思いますが、具体的な活動内容や気を付けていることなどがありましたらお聞かせください
みのり商店会は、人とのつながりが生まれる商店街です。
この環境をいつまでも残したいという想いで、当店の成功だけでなく商店街全体の売上げにつながる選択を心掛けています。
例えば、当店で使用するフルーツは商店街の八百屋さんの果物を、珈琲を使ったお菓子は商店街の珈琲専門店の豆を使用しています。また、練り物店の隠れた名品である大学芋を使ったお菓子の開発も検討しています。
商店街の逸品をコラボという形でお菓子作りに活用させていただくことで、相乗効果を図り、商店街全体の売上向上に寄与し続けることが私の役目だと考えています。
また、役員会議で地元南葛SCのフラッグに「キャプテン翼」の使用を提案し、フラッグ設置、ポスター配布を選手と共に進めた結果、商店街全体の雰囲気を明るくすることに成功しました。
私個人にフォーカスすると、みのり商店会を自身のSNSで紹介しています。さらに毎日の挨拶や街の方との会話・交流を心掛け、信頼関係を築く行動を常に意識しています。
若手を中心とした街の発展や環境作りの提案に向けて、東京都中小企業振興公社さんの「商店街リーダー実践力向上塾」で他の地域の取組みを学び、企画の精度向上を図っているところです。
今後の展開について
当店は、街のケーキ屋さんとしての需要に応えるだけでなく、黒にこだわることで、他店との差異化を意識した顧客開拓を続けてきました。
今後もそこはぶれずに、新しいお菓子の市場を広げていくためのチャレンジを続けていきたいと考えています。
現在、他業種の2店舗と委託販売の契約をしています。この契約は当店にとって他エリアへの周知にもなり、契約先にとってもクロノアールのファンの方に来店いただけるなど、お店の売上に貢献することができます。今後も他業種への委託販売は継続する価値があるものだと考えています。
企業パティシエとして全国の大手製菓メーカーにレシピを提案してきた経験から、黒いお菓子の需要は全国にあると感じています。
最終的な目標は、葛飾区に黒いお菓子だけを作る製造工場を作り、近隣の方の雇用を増やすことです。街の活性化を図る活動と同時に、黒いお菓子が街のシンボル的な銘菓へと躍進するよう、自身の役割を果たしていきます。
開業を目指す方へアドバイスをお願いします
自分の店を開いて思ったのは、創業するのなら「つぶさないビジネス」をすべきだということです。小さな事業でも取引先やお客様など必ず周囲の人を巻き込んでいるはずです。つぶさないビジネスを継続できれば力を貸していただいた方に恩返しもできます。
そういった観点からも創業する前に、リスク回避できる方法をじっくりと考えてから開業することをお薦めします。
私の場合、自分の店をもつまでに20年かかりましたが、おかげでいろいろな問題を乗り切るための知識や、新商品を出し続けられるアイデアを蓄積することができました。開業前の準備に時間をかけた分だけ、細やかな配慮ができる事業が作れるはずです。
東京都には無料で創業をサポートしてくださる取り組みもたくさんあります。ビジネスモデルを複数の専門家に見ていただいてプランをブラッシュアップしながら、助成金などをうまく活用し、つぶさないビジネスにチャレンジしてほしいです。
店舗情報
店舗名 | Patisserie QuroNoir パティスリークロノアール |
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代表者名 | 永堀 浩矢 |
商店街名 | みのり商店会 |
開業年月 | 2021年1月21日 |
URL | https://patisserie-quronoir.com/ |
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